NICU/GCUについて

ここでは日本の新生児医療、NICU/GCUの違い、また、NICU/GCUで使用される保育器やその他医療機器についてご説明します。

日本の新生児医療

新生児医療は日々進歩しています。近年の日本の新生児死亡率(生後28日未満の赤ちゃん)は、1,000出生あたり0.9人と世界最高水準の成績です。

中でも昔であれば命を落としていたような在胎期間の短い早産の赤ちゃんの救命率は、ここ10年で飛躍的に向上し、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカ、イギリス、スウェーデンなどの先進国と比較しても世界トップクラスに位置しており、日本は世界で最も母子に優しい医療を提供している国であると言えます(図)。

今では、日本の新生児医療が目指すものは単なる救命ではなく、大きく成長した子供たちがその後の社会に適応できる、彼らの未来を見据えた医療の提供、すなわち「後遺症なき生存(インタクト サバイバル)」を目指しているのです。

NICU/GCUとは

「出生」は人生の中で最も尊い瞬間であるとともに、母子ともにリスクの高い瞬間でもあります。その過程の中で、赤ちゃんの呼吸や循環状態がままならず、全身管理が必要になることもあります。早産であればなおさらそのリスクが高まります。NICU(新生児集中治療管理室)は、医療スタッフが24時間体制で、そのような赤ちゃんの心拍数や血圧、酸素飽和度(血液中の酸素状態)などをモニタリングしながら、人工呼吸管理輸液管理といった高度な治療を提供できる場所です。

一方、GCU(回復治療室)は、NICUで状態が安定してきた赤ちゃんが、引き続き治療を受ける場所です。赤ちゃんの体重や状態によっては最初からGCUに入院することもあります。GCUでは、看護スタッフを中心に、ときに多職種のスタッフと協力し合って、ご家族が自宅で育児を進めていけるように、退院に向けて育児環境の提供や育児指導を行っていきます。

NICUとGCUの違い

NICU GCU
どんな赤ちゃんが
入院するの?
生まれる前後の様々な要因により、生まれた後に呼吸・循環・栄養などのサポートを必要とする赤ちゃんが入院しています。 NICUでの集中治療を終え、呼吸・循環・栄養状態が落ち着いた赤ちゃんが入院しています。
どんなところ? 新生児専門の集中治療管理室です。24時間体制で、医師、看護師が常駐しており、赤ちゃんの急変時の対応を速やかに行います。 NICUでの急性期の治療を終えた赤ちゃんが、ご家族と退院前の準備をする場所です。
どんなことをするの?

持続的に呼吸や心拍モニタを装着し、人工呼吸管理輸液管理などを行います。

ご家族が赤ちゃんの退院後に家で行う授乳、おむつ交換、沐浴や、時に内服薬、在宅人工呼吸器の管理、気管切開チューブの交換、ミルクの注入などを、看護師、薬剤師、臨床工学技士が指導をします。

保育器の役割

特に早産で小さく生まれた赤ちゃんの全身管理を行う上で、赤ちゃんが過ごす環境を適切な温度・湿度に保ってあげることはとても重要です。なぜなら、早産児は皮膚が未熟なため、サポートがなければ適切に体温を維持することできず、皮膚から大量の水分が失われてしまい、低体温や脱水状態になる可能性があるからです。低体温や脱水は、手足が冷たくなるという単純なものではなく、呼吸、循環を含めた全身状態の悪化につながってしまいます。そこで、保育器がお母さんのお腹の中の代わりとなって、赤ちゃんの全身状態を守ってくれるのです。日本の新生児医療の発展は、この保育器の進歩によって支えられているといって過言ではありません。

その他医療機器の役割

NICUでは保育器以外にも、たくさんの医療機器が赤ちゃんを守ってくれています。

呼吸・心電図モニタ・パルスオキシメーター

赤ちゃんの心拍数や呼吸数、呼吸の波形、血液中の酸素飽和度を常時モニタ画面に表示してくれます。表示される数値を通じて、リアルタイムで赤ちゃんの全身状態を確認することができます。

人工呼吸器

呼吸機能が未熟な赤ちゃんに用いられます。気管にチューブを挿入したり、鼻マスクをしたりして呼吸をサポートします。

光線治療器

黄疸の症状がみられ治療が必要とされる場合に用いられます。赤ちゃんに光を当てることで治療していきます。

輸液ポンプ・シリンジポンプ

赤ちゃんに水分や電解質、栄養剤、薬剤を投与する際に欠かせない医療機器です。それぞれの赤ちゃんに合った速度と量で、精密に投与することができます。